一万ヒット感謝SS

〜想い〜

 

「ぎ、ぎりぎりセーフ」

 いつものことながら相沢君たちは時間ぎりぎりの登校。

 もう少し早く起きられないのかしら?

 ……無理ね、名雪だし。

「おはよう、相沢君。いつもながら大変ね」

「ああ、おはよう香里。そうなんだ、この名雪のやつが……」

 とても疲れた表情。まるで仕事帰りのお父さんね。

「もしかしてひどい事言ってる?」

「「そんなことないわ(ぞ)」」

 釈然としない顔をしているけど、納得したみたい。相変わらず天然ね。

「あっそだ、忘れてたよ。おはよう、香里〜」

 最近酷くなってきてる気がするのは気のせいかしら?

「おはよ〜」

「はいはい、おはよう」

キーンコーンカーンコーン

 ちょうどその時チャイムが鳴って石橋先生が教室に入ってきた。

 

 HRが終わり授業が始まるとさっそく名雪の目が線になる。

 いったいこの子は一日に何時間寝ているのかしら?

 同じ従兄弟なのに、こうも相沢君と違……

 はぁ……やっぱり従兄弟ね、まさか腕を組んで目を開けて寝ているとは思わなかったわ。

 そんなこんなで相沢君たちは放課後まで寝ていた。 正確に言うと相沢君は休み時間毎に起きていたけど。

 あ、言い忘れたけど今日は土曜日、半ドンよ。

 名雪なんてさっそく部員たちに引っ張っていかれてるわ。

 さっそく帰ろうとしている相沢君をあたしは呼び止める。大切な話があったから。伝えたい事があったから。

「あ、相沢君。この後ちょっと付き合ってもらえないかしら?」

 ちょっとどもってしまった。仕方ないじゃない、こんなことするの初めてなんだし。

「ん、いいけど。なんのようだ?」

「ちょっと大切な話があるの」

 良かった、今度はちゃんと言えたわ。

「ん〜、そだな。時間も時間だし、どっか喫茶店でも行くか?」

「ええ」

 

 

 迂闊だったわ。この街で喫茶店といったら百花屋しかないじゃない。

 うう、しかたない。幸いクラスメイトは居ない見たいだし、それにどうせすぐにばれる事じゃない。覚悟を決めるのよ、香里。

 そんな感じで自分を励ましている間、相沢君はメニューとにらめっこ。

「日替わり定食とアイスコーヒーで。香里は?」

「あたしも同じもので」

 注文を受けたウエイトレスが下がっていく。それを確認して相沢君があたしの方に向き直る。

「さて。なんだ大切な話って?」

 真面目な顔で見つめられる。もう、そんなに見つめられると言いにくいじゃない。

「あ、あのね」

 自分でも顔が紅潮していくのがわかる。でももう止まれない。いえ、止まらない。

「相沢君」

 

貴方は私のことをどう思っていますか?

 

「あたしは」

 

あたしの気持ち知っていますか?

 

「あなたの事が」

 

あたしの気持ちに答えてくれますか?

 

「好きです」

 

 


〜後書き〜
一万HIT感謝SSです。
にしても、展開強引だな(苦笑
やはり私には短編を書く能力は無いようです(長編も長編だが
短く要旨をまとめると言う事が苦手で(致命的

さて、次は蒼紅の月、第六話です。
ぐはっ!全然書けてねぇ(汗
げぶぅ!!そういや一周年記念SSも書かなきゃ(死
うぐぅ、ボクの事忘れてください(マテ
ま、えっちらおっちら頑張りますか(オイ


BACK

 

 あれから、あたしと相沢君、いえ祐一は付き合い始めた。

 始めはいろいろ大変だったのよ、最近は大分落ち着いてきたけど。

 あの7人が騒ぐのは当然予想していたけど、まさかクラス全体に騒がれるとは思っても見なかったわ。

 それは、まあその、百花屋でキスしちゃったあたしたちにも非があるんだけど。

 

 昼食後、五時限目までのわずかな時間、祐一とあたしは中庭で過ごしている。

 祐一はあたしの膝の上に頭を乗せて、横になっているわ。俗に言う膝枕と言う状態ね。

 その祐一にあたしはふと意地悪な質問をした。

「ねぇ、祐一」

「ん?」

 食後特有の眠そうで気だるげな声をあげ、あたしの顔を見上げる。

「いつからあたしの事が好きだったの?」

 あたしはほんの冗談のつもりだったんだけど、祐一は真面目に答えてくれた。

「そうだな、たぶん香里のことが好きだと自覚したのはあの夜だな。あの時、二度と香里を哀しませたくない、涙を流させたくないと思った。例えそれが心の中でも。う〜ん、答えになってないな」

 その言葉を聞いたとき、あたしの体は自然と動いていた。

 上体を折り、膝の上の祐一の顔にあたしの顔を近づけ、優しく口付けた。

 それは短くも長い、甘くも切ない時間だった。

 

 その後回りの生徒に冷やかされたあたし達は、そそくさとその場を後にした。

 どこで聞きつけたのか、あの7人が教室に登場してまた一悶着あったわ。

 それはまた、次の機会にでも話そうかしら。

 

 

 

〜ねぇ、相沢君〜

 

 

 

〜あたしね、今とっても幸せなの〜

 

 

 

〜栞がいて〜

 

 

 

〜名雪がいて〜

 

 

 

〜みんながいて〜

 

 

 

〜そして何より相沢君が居る〜

 

 

 

〜こんな日が、ずっと続きますように〜

 

 

 

〜そしてこれからもよろしくね〜