50000HIT感謝SS
ファーストキスの行方は?・後編

 

 

ピンポーン

「はい、どちら……あら、祐一君?」

 チャイムの電子音に続いて香里と栞を足して2で割ったような女性が顔を出した。

 香里の母親の佐織さんだ。

「どうも、佐織さん。……香里いますか?」

「香里ちゃんなら部屋に居ると思うわ。上がって、上がって」

「ちょっ、佐織さん!?」

 佐織さんは俺の手を引っ張る。どうもこの家系は奔放というか、何と言うか……少々幼い部分が多分に残っているようだ。

 普段は大人びてる香里にそういう部分を見せられると……こほんっ、話しがそれた。

 さすがに見た目が女子大生ぐらいと言えど、佐織さんにこう言う行動を取られると少々戸惑う。

「遠慮しない、遠慮しない」

 結局問答無用で居間まで連れこまれてしまった。

 

 

「あっ相沢君!?」

 佐織さんに呼ばれ居間にやってきた香里の第一声はそれだった。

 いやま、普通驚くよな。

「よ、よぉ」

 俺も片手を上げて引きつった笑みを浮かべるくらいしか出来なかったし(苦笑)

ガタンッ!

ダンッダンッダンッ!!

ガチャ、バタンッ!

ガサガサ(約二分ほど)

ダンッダンッダンッ!!

ガチャッ

「い、いらっしゃい、相沢君」

「あ、ああ今日は」

 う〜む、顔を真っ赤にしたかおりん萌え…………ハッ!? あまりの事に一瞬現実から意識が剥離してしまった。

 簡単に言うと香里は部屋に戻り、服を着替えてきたわけだな。

「祐一君、コーヒーでよかったわよね?」

 丁度香里に話しかけようとした瞬間、佐織さんがキッチンから声を発する。

「え、ええ、コーヒーで。砂糖とミルクはいりませんから」

「それで、今日は何か用?」

 大分顔色の戻った香里が聞いてくる。

「ああ。ま、用と言うほどでもないんだけどな……香里と話しに来たんだ」

「あたしと?」

 う〜む、少々意味が拾いにくかったようだ。

「アレからちょっとぎこちないかっただろ。だからな」

「アレから? ……あっ」

 あらら、思いだしたのか真っ赤になってうつむいてしまった。……可愛すぎる。

「香里」

 俺に呼ばれ顔を上げる。めちゃくちゃ可憐だ。

 キス……しても良いよな。

 恥ずかしげに見上げてくる香里に俺はゆっくりと顔を近づけて行く。

「あ、相沢君!?」

「目、瞑って」

 俺に言われ、おずおずと目を閉じていく。そんな香里の唇に俺の唇が――

「じ〜」

「おわっ!?」

「きゃっ!?」

 ――重ならなかった。

 しまった、ここは香里の部屋じゃなくて居間だった(汗)

 うおっ!? 香里なんて湯気が出そうなくらい真っ赤だ。

 うう、ぎくしゃくした香里を解きほぐそうとやってきたのに、逆に硬くしちまった。

「祐一君も香里ちゃんもそう言う事はベットの中でね♪」

「さ、佐織さん!?」

「お、お母さん!?」

トルルルルル トルルルルル

 ヤバイと思ったら丁度が電話が鳴った。天の助けだ。

「すいません」

 佐織さんが断って電話を取りに行く。

 ひとまず助かっ――

「祐一君、水瀬さんが祐一君に変わってくれって」

「はい、俺ですか?」

「はい♪」

「もしもし、秋子さんですか?」

「了承♪ 明日はお赤飯を炊いて帰宅を待ってますので」

「はい?」

「それでは」

ガチャンッ ツーッ ツーッ

 ………

 ……

 …

「マジっすか!?」

 ――てねぇ!!

「何の電話だったの?」

「それは、その、まあ」

 こんな事香里に言えるはずもなく――

「祐一君は今日お泊りね♪」

 ――ぐはっ!? 佐織さん……聞こえてたなんて事ないですよね? 香里と同じ位置ですよ?

「祐一君、お父さんと一緒に孫の名前を考えておくから」

「ちょっと、お母さん」

「香里ちゃん。初めては痛いけど、がんばるのよ」

 ぐはっぁ!?

「ど、どどどどどういう意味ですか、佐織さん!?」

「祐一君」

「はい?」

「香里ちゃん、こう見えて寂しがり屋で甘えン坊なの。迷惑かけるかもしれないけどよろしくお願いしますね」

 にっこりと笑みを消し、佐織さんは真面目な顔をする。

 そんな佐織さんに俺は笑顔で答えた。

「ええ、知ってますよ。俺はそんな香里が大好きなんですから」

「相沢君……」

 ――って、香里も居たんだ(汗)

 思わず言ってしまった。うぅ、恥ずかしい。

 けど偽らざる俺の気持ちだ。

「香里ちゃん、貴女の答えは?」

「あたしの答えは……」

 

 


〜後書き〜
佐織さん大暴れ(ぉぉ
まさかここまで大暴れするとは……
書いた私自身、ここまで自分で突っ走ってくれるキャラは初めてです(マテ
まさか前後編で、それも四万ヒットと五万ヒットにまたがるとは……(汗
大した作品でもないのに時間かかりすぎ(苦笑)
しかもファーストキスあまり関係なくなってるし(更苦笑)
これも私の遅筆および能力不足の所為です。
ごめんなさいm( _ _ )m


 

 

「相沢君、ほんとにあたしでよかったの?」

 事後の倦怠感に包まれたまま抱き合っていた香里が思いだしたように言った。

「呼び方、戻ってるぞ」

「あっ」

「祐一、だろ?」

「うんっ。それで祐一は」

「香里は嫌だったか?」

「ううん、祐一だから」

「俺もそうさ」

 そう言って胸の上に乗ってる香里の頭を撫でる。

 幸せな表情を浮かべ、香里は眠りに落ちていく。

「おやすみ、香里」

チュッ

 もう何度目かのキス――初めてのお休みのキス――をして、俺の意識も眠りに落ちていった。

 

 

〜おまけ〜

「祐一君に香里の事お願いしちゃったけど良いわよね?」

「そうだな。香里と栞を救ってくれた彼なら安心だ」

「それで孫の名前なんだけど、やっぱり男なら香一、女なら祐里かしらね、あなた」

「えぅ〜そんなお父さんとお母さんなんて嫌いです!」

 香里の部屋に乱入しようとして、両親に簀巻きにされた栞が膨れていたが、居間はおしなべて平和だった。


戻る