今日、俺は珍しく全力疾走の登校をしている。
え? 珍しくないじゃないかって?
すまん、補語(?)が抜けていた。
今日、俺は珍しく一人で全力疾走の登校をしている。
ん、何で一人かって?
まあ、もろもろの事情は在るんだが、寝雪が……もとい、名雪が動かなくなったと言うのが一番の理由だ。
おっと、予鈴が鳴り始めた。ラストスパートだ。
100%中の100%を叩きだし、俺は一気に校門を駆け抜ける。
そして下駄箱にタッチダウン、一動作で靴を脱ぎ捨て下駄箱からシューz――
ヒラヒラ
――何か落ちてきた。
・
・
・
・
・
・
・
ラヴレターッ!?(汗)
間違えた、ラブレターッ!?(滝汗)
もしかしてこれはラブレターと言うものなのでしかーっ!?(語尾変
60000Hit感謝SS
ラブレター
ラブレターに気を取られて結局遅刻してしまった。
うぐぅ……
いや、まあ遅れたと言ってもHRだけだが……
「よう、相沢。いつもギリギリの登校だな……授業に(ニヤソ)」
チクショウ、いつもは俺のせいじゃないのに。
「ん、なんだ? その手に持っているのは」
ぐはっ! しまった、ラブレターを手に持ったままだったぁぁぁぁぁ!?
どうする!? こいつにバレたら間違いなく学校中に話しは広まるぞ!?
「そう言えば名雪が居ないみたいだけど、どうしたの?」
ナイスタイミング! さすがお助け女神かおりんだ、支天輪に入れてお持ち帰りしたいくらいだ。
ま、何はともあれこの機を活かさない手はない。
「ああ、名雪は動かなくなったから置いて来た」
「「え゛?」」
「だから動かなくなったから置いて来た」
耳が悪いぞ二人とも。
「ど、どお言う事よ、それは!?」
香里が俺の胸ぐらを掴み、顔を寄せてくる。
うむ、鬼気迫るとはこの事だな。非情に怖いぞ。それに微妙に首がしまって苦しい。
「くっ、詳しく事情を説明するから離せ、苦しい……ぐはっ!? ギブギブッ!!」
俺のタップにしょうがないと言った感じで香里は手を離す。
ぐは……結構苦しかったぞ。
「それで、どうして動かなくなったの?」
「うむ、動かなくなった理由は怠け癖がついたんじゃないかと俺は推論しているのだが、順を追って話そう。昔々、ある所に水sゲフゥッ!?」
「真面目に話しなさい」
「は゛い゛(涙)」
いい左(肝臓打ち)もってるな、香里……
「いつもの如く、俺はめざまし王国に侵入した。無論、そこに設置された時げnゴフッ!?」
「三回目はないわよ?」
その右(心臓破壊打)は世界を狙えるぜ……
「イエッサ、軍曹」
そろそろ俺のHPも残り少なくなってきたし、真面目に話そう。
「いつもの如く起きない名雪を俺は起こしに行ったんだ。今日は特に起きなくてな、仕方なく俺は物理的な攻勢に出たわけだ。取りあえず鼻を塞ぎ、口を塞ぐ準備をした」
ゴクリッ
俺が言葉を切った所で二人が息を飲んだ。
うむ、なかなか楽しいぞ。
「その後、肺の空気を抜くために横隔膜に寸掌を打ち込み、空気が抜けた瞬間口を塞いだ」
ゴッ!
オォ!? 二人が同時に机に頭を撃ちつけた。なんて古いリアクション?
「そしたら起きないどころか動かなくなったんだぜ? まったく怠け癖もここまで来たら見事だぞ」
「「キ……」」
「き?」
「「キッパリと動かなくなったのはお前の所為だぁぁぁぁぁぁ!!」」
「なに、そうなのか!?」
「当然よ。普通の人なら死ぬわ!!」
「いや、しかし俺はそれをやられて生きてる人物を……」
「作者は人外よ!!」(そんな酷な事無いでしょう)
・
・
・
・
・
・
・
・
何とかあの場を切り抜けることは出来た。まあ、二つほど問題は起こったが……
一つ目は、香里にしこたま叱られた事。まさかあそこまで怒るとは……
いったい何がいけなかったんだろう?
二つ目は、俺自身がラブレターの存在を忘れてた事……
もしかして俺ってアホなんだろうか?(アホだな)
うぐぅ……
気を取り直してラブレターの内容を確認だ、ラブレターの。
・
・
・
・
・
・
・
・
「祐一、放課後だよ♪」(注:北川)
「よし、香里。一緒にメシでも食いに行くか?」(因みに土曜日)
「あら、もしかして相沢君の奢り?」
「うぐぅ」
「お〜〜〜い?」
「冗談よ、それでどこ行くの?」
「いや、場所は決めてないんだが……何か食いたいものあるか?」
「相沢く〜ん? 美坂さ〜ん?」
「相沢君の好きなものでいいわよ」
「そうだな……うどんなんてどうだ?」
「ええ、いいわよ」
「俺も一緒に行きたいな〜」
「うるさいわよ、北川君」
「が〜ん!?」(石化)
「んじゃ、さっそく行くか」
「ええ」
・
・
・
・
・
・
・
・
「これだけ経って来ないとなると、間違いなく北川はうどん屋に行ったな」
「読みどおりね」
説明すると現在俺たちは百花屋にいる。
まあいつもの事だ。因みに先ほどのやり取りは北川を巻くためのフェイクだ。
「んで、聞きたいんだが、コレは一体何だ?」
俺は手に持ったラブレターをヒラヒラと振ってみせる。
「ラブレターね」
「いや、どちらかと言うと内容の方の意味を聞いたんだが……」
「……な、内容どおりよ」
「いや、流石にコレはストレート過ぎるというか、あまりに直接的過ぎるというか、下手をしたら冗談で済まされかねんと思うんだが」
「しょうがないじゃない、他に書き方を思いつかなかったんだから」
「ま、不器用な香里らしいと言えば香里らしいけどな」
だんだんと言葉が尻すぼみになっていく香里に笑いかける。
「なによ、笑うことないじゃない」
「悪い悪い。そういう笑みじゃないさ。香里らしくて可愛いと思ってな」
「か、可愛いって……」
う〜む、初心だ。真っ赤になってしまった。
「そういう表情も可愛いぞ」
「もうっ……」
香里……怒った顔になってないぞ、誉められた嬉しさがにじみ出てる。
「それで、できれば答えを聞かせてほしいんだけど」
「そうだな……………………………………………………………………………………………………………………………………」
「……………早く言ってほしいんだけど?」
「……いや、照れくさくてな」
「もう、待ってるあたしの身になって――
「俺は香里のことが好きだ。俺と付き合って欲しい……こう言うものは男から言うべきだろ?」
――言われるのも結構恥ずかしいわね」
「だな」
「言われてみて気付いたわ」
「それで答えは?」
「答えは……」
ゆっくりと近づいてくる香里の顔。
ちゅっ
鼻腔をくすぐる甘い香りと唇に広がる柔らかな感触。
――香里からのキス――
「……これでいいかしら?」
「恥ずかしい奴だな……そんなヤツはこうだ」
ちゅっ
――俺からのキス――
「結構、恥ずかしいわね」
「だろ」
「でも、とっても幸せ」
「確かに……もう一回するか?」
「それもいいわね」
私は 貴方のことが 好きです。 from 美坂香里 |