ARMORDE CORE 蒼紅の月

 

いつからか、三人で居るのが普通になっていた。

いつからか、それを大切に思えるようになった。

いつまでも、いつまでも護っていこうと思った。

いつまでも、いつまでも護れると思っていた。

失うなんて、考えてもみなかった……

 

第一話 哀しき過去(記憶)

 

ガバッ!

「はあはあ……はあ……夢……か」

 悪夢にうなされ、祐一は目を覚ました。いや、それは悪夢ではなく記憶だろう。

 失った哀しみと、護れなかった後悔の。

「くそ……」

 祐一が時計を見ると早朝五時半。家の中は静まりかえっている。

 もう一度眠ろうとした祐一であったが、いかんせん眠れそうに無かった。

 仕方なく祐一は服を着こみ、散歩に出かけることにした。

 

 それが起こったのは四年前。

 彼らが出逢い、一年たったぐらいの時。

 彼らが幸せだった時。

 彼らは全てを失った。

 

「相沢……君?」

 香里が部屋のカーテンを開くと祐一が道を歩いているのが見えた。

「こんな時間に散歩かしら?」

 そう言えば最近、彼様子が変なのよねと呟く。

 ふと思い立って、香里は部屋を後にした。

 

「公園か……」

 気がつくと祐一は公園まで歩いてきていた。

 そう遠い距離では無いのだが、無意識で歩いていた時間としては長い距離だろう。

「……何で」

 空を見上げる。

 しかしその瞳が捉えているのは空ではなかった。

 捉えるのは過ぎ去りし日々。

 過去の出来事。

 幸せで楽しくて、それ故に哀しい記憶。

「相沢君」

 突然後から声がかかる。

「こんな時間に何してるの?」

 その声をかけた人物は――

「……香里?」

 ――香里であった。

 その声に思わずふり返った祐一は、次の瞬間慌てて顔をそらした。

「……泣いて……いたの?」

 

「い、いや。そんな事ないぞ。……そう言う香里こそどうしたんだ、こんな時間に」

 祐一が話題を変えようとしたのは目に見えていたが、香里はそれに逆らうことはしなかった。

「あたし?あたしは窓から相沢君が見えたから」

「なるほど、それでつけて来たと?」

 冗談めかして話す祐一。それはいつもの祐一の姿。いつもの祐一の行動。

 しかし、香里はその瞳に隠しきれない哀しみを見逃さなかった。

 そしてそれをほって置く事が出来なかった。

「相沢君……」

 神妙な顔をして祐一に問いかける。

 その表情に祐一も否応なく真面目な表情になる。

「あなた……最近変よ。あの紅いACにあってから」

「…………」

 祐一は無言。気にせずに香里は続ける。

「ねぇ、相沢君。気付いてる? あなた時々すごく遠い目をするの。そしていつもその後とても哀しい目をしてる」

 そこで言葉をきり、祐一の目を見つめる。

「昔に哀しいことがあったんでしょ? あの紅いACに関係した」

 見つめつづける真摯な瞳。何故ここまで真剣になるのか香里自身、その理由に気付いていない。

 軽く息を吐き、祐一は話す。

「聞きたいか?」

 その言葉に香里の表情が明るくなる。

「聞かせて欲しい。あたしは貴方の事が知りたい。それに……哀しみは分け合っほうが楽でしょう?」

 その言葉に祐一はハッとする。

 フラッシュバックする過去。

 彼女からかけられた言葉。

 過去にかけられた同じ言葉。

 ゆっくりと祐一は過去を語り始めた。

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!

 警報が街に鳴り響く。

 テロが起こった警報。そしてこの警報がなるテロはACを使ったものに他ならない。

「ハァ……ハァ……」

 対ACテロ用のシェルターへ向け走る人々。その中に一組の母子がいる。

 子供の手を引き、走る母――相沢祐子――はその子供に向け声をかける。

「大丈夫、祐一?」「大丈夫だよ、お母さん。それより早く逃げないと危ないよ」

 年のころは十歳足らずか。年に似合わずしっかりとした喋りをしている。

「早くシェルターにつかないとね」

 そう言って手を握りなおし二人は走るスピードを上げた。

 

 ACを緊急起動させながら、男は自分の妻と子の身をあんじる。

『戦闘システム起動』

 その男の思考を遮るように、システム音がコックピットに響いた。

「蒼刃、相沢恭一出る!!」

その言葉と共に男――相沢恭一――はテロ鎮圧のためにACを発進させた。

 

 一機のACが街を破壊していく。

 内包されし力に善悪はない。しかし、それは使用者、発現者を得る事により善にも悪にもなる。

 悪い事にそれを得た人物は悪へ加担した。

 破壊と殺戮の享楽に溺れ、自分の為している事が何を意味しているのかに気が付かない。いや、気付こうともしない。

 再びマシンガンを乱射しようとそのACが構えたとき、オープン回線で通信が入った。

「今すぐACを止め投降しろ。身の安全は保障する」

 しかし、その声を無視し通信を入れたAC――蒼刃――に向けマシンガンを乱射した。

「止めろと言われて止める馬鹿はいないんだよぉ」

 確かに止まる馬鹿はいない。いや、馬鹿だからこそ止まらない。良識のある人物ならそもそもこんな行為はしないからだ。

「……貴様を強制排除する。悪く思うな」

 その声と共にライフルが火を噴く。

 予想だにしない突然の攻撃に、テロリストは避けるまもなく直撃を食らう。

「ち、ちくしょう!!」

 慌ててマシンガンを乱射するが、素人に毛が生えた程度の腕で恭一の動きを捉えられる筈もなく、それは全て空を切った。

 恭一は軽量二脚ACの機動性を活かし一気に敵機に接近、マシンガンをブレードで斬り捨てた。

ドゴォッ!!

 一息おいて切断されたマシンガンが爆ぜる。その衝撃により敵機はバランスを崩した。

 その気を逃がさずに恭一は一気に攻撃を加える。

 ブレードで頭部を薙ぎ、照準をコックピット部に合わせて――

「自分の罪を抱いて逝け。貴様はそれだけの罪を犯した」

 ――トリガーを引き絞る。小気味のいい発射音と共にロケットが発射される。

 そしてそれは狙いたがわずに敵機のコックピット部に直撃した。

 

 

〜つづく〜


〜後書き〜

第二章始まりました。
今回から祐一の過去が語られます。
まあ、色々と重要なキャラが出てきます。
あ、相沢恭一と相沢祐子ですが、はっきりと書いてませんが祐一の二親です(わかってると思いますけど
今回は恭一さん大活躍です(ぉぉ

今回執筆時間がまったくなかったので粗が目立つと思いますが、できれば流してください(マテ
ではでは、第二話でお会いしましょう。

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