ARMORDE CORE 蒼紅の月

 求めたもの……

 

 望んだもの……

 

 失ったもの……

 

 全てがそこにあった……

 

 月蝕の時を迎える、その瞬間まで……

 

第八話 MLA

 

「ゆ〜くん♪」

抱きっ

 突然の声と共に祐一は突然後からはがい締めに……抱きしめられた。

「ルッ……ルナ!?」

 この時、祐一16歳、ルナ20歳である。

 祐一には少々刺激が強すぎる行為である。

「もう、真っ赤になっちゃって……ゆ〜くん可愛い♪」

 しかし抱きしめられた事により真っ赤になった祐一をルナは更に強く抱きしめた。

「ちょっ、待って、ルナ」

「照れない照れない」

 パッと離れたルナは真っ赤になっている祐一の額を指で突っつく。

「それで、何のようなの?」

 少々憮然としながら祐一はルナに用件を問う。

 いまだに照れは抜けないが、約1年ルナのこう言った奇抜な行為には慣れっこである。

「もう、祐君冷たい。まあ良いわ。ちょっと見て欲しいものがあるの」

 こっちっこっちと手招きする。

 こう言うときにルナに何を言っても無駄である。無論、それを理解していない祐一ではなかった。

 仕方なくルナの後に続いた。

 

 

「こ……これは!?」

 一機のACが祐一の視界に広がる。

 軽量二脚、武装はおろか塗装すらされていない。

 見ただけでその機体のスペックがわかろうはずも無い。しかし祐一にはその機体の潜在能力が感じられるような気がした。

「MLA03−Y」

ゴクリッ

 思わず祐一の喉がなった。Yのイニシャルの人物はMoonの中では祐一だけである。

 そしてそのYのイニシャルが冠されたと言う事は――

「貴方の機体よ」

 ――祐一の機体と言う事である。

 

 

 暗い部屋。

 誰も知らない、誰も気が付かない所。

 アマテラス本社、の一室で二人の男の密会が行われた。

「月蝕の開始が決まった」

「日付は?」

「25日の25:00時だ」

「MLA02−Gのロールアウト予定日か……」

「スサノオ全部隊で強襲を掛ける。もちろん俺も出る」

「了解した。……隼人、Moonは手強いぞ」

「わかっているさ。しかしこの部隊を潰さない事にはな……」

「ふっ、確かにそのとおりだ。それでは、私はそろそろ戻るとしよう」

「ゲイツ……ハーヴィーはお前が始末しろ」

 隼人のその言葉にゲイツはニヤリと笑みを返した。

 

 

 MLA――MODEL LUNA=ARES――

 その名のとおりルナ=アーエスのスペシャルメイドの機体である。

 そして冠されるイニシャル、それは搭乗者を示す。

 無論、それは機体をそのイニシャルの搭乗者用に製作した事を示す。

 

 

「俺の機体とは正反対のようだな」

「アル……何処から湧いて出たの?」

「俺はボウフラか!?」

 突然現われたアルにも動じず、ルナはいつもどおりの反応を示した。

 アルはアルでいつもの反応ではあったが。

「コレのせいでMLA02のロールアウトが遅れたわけだな」

 しみじみとMLA03を眺める。

「ねぇねぇ、祐君。完成図と予想性能をまとめたんだけど見る?」

「お願いします」

 そんなアルをルナと祐一は丁重に無視した。

「俺は無視か!?」

「コレが完成図よ」

「コレが……って、エエ!?」

 祐一が驚くのも無理は無い。

 完成図に描かれている機体にブレード以外の武器が装備されて無かったのだ。

「あの……ルナ、コレはどう言う事?」

 完成図の武装を指差しながらルナに問う。

 その問いにルナは簡単に答えた。

「好きなものを選べって事よ」

 当然と言えば当然の事であった。

 もともと接近戦を主に作られた機体である。接近戦の武器こそ特化するために設計するであろうが、遠距離戦の武器まで考えるはずは無い。市販の武器で気に入ったものを使えばそれでいいのだ。

 むしろその事により、遠距離戦での選択の幅を広げたとも言える。

「なるほど……」

 次いで祐一は予想されうる性能に目を落とす。

 全ての能力は群を抜いている。いまの祐一の蒼刃とは比べ物にならない。

 あえて劣る部分を言えば機体の耐久値。それは運動性のために機体を軽量化した結果のために他ならない。

 と、言う事は欠点とはならない。長所を伸ばした結果である。

「(扱ってみたい)」

 機体の性能は祐一の理解を超えた値を示している。

 この機体を扱ってみたい。祐一の心はその欲求で満たされていた。

「うぅ……」

 そんな祐一とは裏腹に無視されたアルは後で泣いていた……

 

 

「MLA02−G、完成ね」

 イーリスは額の汗を拭った。

 MLA02、ロールアウト。正確に言えば後は塗装を残すのみである。

「なかなか時間が掛かったな」

 苦笑ながらにロバートは言う。

 MLA03の同時進行がなければ、既に完成して居たはずであるからだ。

「次は03ね」

「骨が折れるよ、まったく……」

 疲れを感じさせず言うイーリスにロバートはため息を禁じえなかった。

「恨むぞ、ルナ……」

 ロバートがなかば本気で呟いた言葉は、誰の耳に入ることなくガレージ内に消えていった。

 

 

「新型のブレード?」

「そう、接近戦用特化型の機体だからね。もちろん今までとは比べ物にならない威力よ」

 ルナの機体説明が続く。

 現在は唯一の固定武装、ブレードに付いてである。

「実は今日設計図が出来あがったところなんだけどね」

「機体の完成予想日は?」

「後一ヶ月って所かしら。機体だけなら動かせるまでは完成してるけど、後はイーリス達のがんばり次第ね」

「あと一ヶ月……」

 心の高揚を隠しきれず、祐一は声を洩らした。

 

 

〜つづく〜


〜後書き〜
おお、日付変わるギリギリやん(死
ま、何とかアップできたし善しとしよう。
と言うわけで第八話完成。
Moonの一年間は今度サイドストーリーにでもしようかと思ってます。
あとはアルとルナの馴れ初めとか(ぉぉ
ま、何事もテストが終わってからですが(笑
あと二日、頑張らないとな〜

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