ARMORDE CORE 蒼紅の月

 ロールアウトの済んだMLAのコックピットにゲイツは座る。

 スペックを確かめるためだ。

 まずは電子制御系の確認からこなしていく。

「反応速度……問題無し」

 その後歩行、走行、跳躍、照準、……それらをゲイツはこなしていった。

 

 

第九話 月蝕

 

 

「ハァ?」

 急な質問にアルはストローをくわえるたまま間抜けな声を上げた。

「だから、02のロールアウトだよ。たしか今日だろ?」

 そんなアルにため息をつきながら、祐一はもう一度言った。

 現在二人は喫茶店に来ていた。

 はっきり言うと二人は暇をもてあましていた。

 射撃の訓練をしていると、弾薬代がかかるとルナにお小言を言われ、逃げてきたのである。

 そこでふと祐一がMLA02のロールアウトが今日であったと思いだしたのである。

「ああ、今日だぞ。もうゲイツがテストしてるころじゃないか?」

「それじゃ、それを見に行かないか?」

 祐一が見を乗り出して言う。

 しかし、アルは頭を左右に振った。

「無理だな。ゲイツの性格を知ってるだろ?」

 祐一が知っているゲイツが見学などさせようはずも無い。邪魔だから消えろ、と追い出されてお終いだろう。

「確かに……」

「だろ」

 二人は顔を見合わせため息をついた。

 

 

「良い調子ね」

 MLA02の性能を測定中であったルナ声がかかった。

「ええ、予想以上に良い出来よ」

 声のほうには振りかえらずにルナは答えた。

 そんなルナに苦笑しつつイーリスは左手に持ったコーヒーを渡し、隣の椅子に腰かけた。

「ありがとう」

「予想以上?」

「ええ。予想以上のスペックよ」

 その言葉にイーリスは画面を覗きこむ。

 測定値はほとんどの値を+20%上回っている。

「各部の強度は持つの?」

「ええ、この位なら悠々と持つように設計してるわ」

 そう言ったルナはこうなる事を予想していたようである。

「もしかして予想してた?」

「なんとなくね」

 天才とは往々にして思いつきのある人物の事をさす。

 その言葉に全くルナらしいことだ、とイーリスは思った。

 

 

 ゆっくりとした時間が過ぎていく。

 いつもどおりの……いつも以上に静かで平和な日。

 しかし、それは嵐の前の静けさでしかなかった。

 

 

「各員、突入準備整いました」

 黒い覆面をした男が、目の前の男――御神隼人――に告げた。

「AC隊のほうはどうだ?」

「はっ。そちらの方も準備は整っています」

「わかった。別命あるまで待機」

「はっ」

 ガチャガチャと音を立てながら男は下がっていく。

 男は全身黒い服で覆い、そして銃器を下げている。夜戦および突入戦用意。男達の装備はまさにそれであった。

 

 

「残り1時間か……」

 現在25日、24時。

カタカタ

 目の前のインターフェースを操作し、ゲートのロックを解除していく。

 全てのロックを解除した後、ゲイツは携帯通信機をとった。

「こちらゲイツ。各ゲートロック解除完了」

『こちら隼人。了解した。作戦開始まで待機していてくれ』

「了解」

 短い通信を終え、ゲイツは席を立った。

 そして時は経つ。

 

 

 ――25日、25:00時――

「時間だ……」

 時計を見た隼人は皆に通信を送った。

「月蝕の時が来た。繰り返す、月蝕の時が来た」

 その通信により隠れていた人間が一気に動き始める。

 しかし、どの人間も物音一つ経てずに突入、いや侵入していく。

 そんな各員を見ながら隼人はゲイツに通信を送る。

「こちら隼人。ゲイツ、聞こえるか? ゲイツ?」

『こちらゲイツ。作戦開始か?』

「ああ。月蝕開始だ」

『了解した。こちらも行動を起こす』

 

 

「ん?」

 この時間に祐一が起きていたのは偶然。

 そしてその物音に気が付いたのも偶然であった。

「侵入者か?」

 その音は人間が足音をしのばせ動く音に他ならなかった。

「数が多いな……」

 音を立てないようにベットから這いだす。

 静かに服を着替え、そして装備を確認していく。

 最後に――

シャキンッ!

 ――銃の遊底を操作し薬室に弾を込める。

「アル達は……俺が心配するだけ無駄かな」

 アル達の事を思い浮かべ、そしてその考えを苦笑する。

 こんな時に笑えるのはその信頼している証拠だろう。

「まずは皆に合流する事が先決か」

 換えのマガジンを二つ持ち、祐一は外に誰も居ないのを確認する。

 そして一気に部屋を飛びだした。

 

 

ガァァァァァ!!

 一瞬前まで居た場所を銃弾が襲う。

ダダンッ!!

 ルナを背にかばいながら、アルはとっさに銃を向け発砲する。そしてバリケードに移動する。

「マシンガン? いや、この音はアサルトライフルか!!」

 ピストルの弾丸を使用するマシンガンに比べライフル弾のアサルトライフルの貫通力は圧倒的と言ってよい。マシンガンではバリケードになるものでもアサルトライフルでは貫通する場合が多い。

「アル、後!!」

「ちぃ!!」

チェィン!

 ルナの声にアルはとっさに身体をずらす。ギリギリで身体をかすめ、アルを狙った弾は外れる。

ダダンッ!

「ぐぁ!」

 アルとは全く逆の方向から飛んできた弾がアルを狙った敵に直撃した。

「祐一」

「祐君」

「貸し1だな」

 そんな軽口を叩きながら祐一がアル達に合流した。

「さて、どうする?」

 相手の装備はアサルトライフル、そして防弾チョッキ。かたや祐一とアルの装備はハンドガンが一丁ずつ。装備の差は圧倒的である。

「どうにかして格納庫へ移動だな。それ以外に手は無い」

「格納庫は無事なのか?」

 祐一の疑問はもっともであった。格納庫が占拠されていない保証は何処にも無い。

「こう言う事を予想して、格納庫には簡単には行けないように設計してるの」

「なる」

「それじゃ、格納庫へ移動だ」

カンッ!

カンッ!

 祐一達が格納庫へ移動しようとた瞬間、祐一達の足元に手榴弾が投げこまれた。

ドォン!!

 くぐもった音が辺りに響いた。

 

 

〜つづく〜


〜後書き〜
第二章も残すところあと一話。
う〜む、そろそろ長寿SSの仲間入りかな〜(ぉぉ
ラストはなんか生身の銃撃戦で終わりそうだけど(マテ
AC戦が無い雰囲気(笑

は〜、今回はきつかった。
メイドがまさか二千ヒットするとは(笑
嬉しい限りです。
四万ヒットが一気に近づいてヒイヒイ言ってますが(笑
それでは次のSSでお会いしましょう。

戻る