「朝です。起きてください」

 うむぅ……

「祐一さん、起きてください」

 うむむぅ……

「朝食が冷えてしまいますよ」

「う〜ん……おはよう、香里」

「はい。おはようございます、祐一さん。朝食の準備が出来てますので」

「ああ、着替えたらすぐに行くよ。いつもありがとう」

「いえ、香里は祐一さんのメイドですから」

 

 

かおりんメイド物語・千客万来編

 

 

ガバッ!!

「……夢か」

 う〜む、あんな香里も可愛くていいかも(笑)

 なんて事を考えてたら香里が俺を起こしに来たようだ。

 俺が起きてた事に驚いてるみたいだが……

「あら、起きてたの? おはよう、相沢君」

「お、おお。おはよう、香里」

 夢とは違うけど、夢以上の微笑み。

 抱きしめたくなるほど可愛い。思わず見とれてしまった。

「朝食が出来てるわ」

「わかった、すぐに行く。サンキュな」

「ふふ、珍しいわね。相沢君がそんな事言うなんて」

 まだ俺は夢を見ているのか? めちゃくちゃかわええ〜ぞ〜。

 ……ギュッ!

 痛い、と言う事は夢じゃない!?

 

 

 何だかんだで、こんな状況を楽しめるようになったのは、慣れたと言う事なんだろうか。

「どうしたの、難しい顔して?」

「いや、何でも無い。お、今日は小麦粉をこねて焼いたものか?」

「素直にパンって言えないの?」

「ふっ、それが俺だ」

「威張って言う事じゃないと思うけど……コーヒーでよかったよね?」

「ああ、サンキュ」

 う〜む、大分俺の嗜好を理解されてしまっているな。メイドらしいと言えばメイドらしいが。

 今日は珍しく洋食か。トーストに目玉焼き、カリカリにしたベーコン。

 見事だ。タイヤキうぐぅや妖狐あぅ〜に見習わせたいくらいだ。

「今日も美味だぞ」

「ありがと……はい、コーヒー」

 うむ、いまだに誉められる事に慣れないらしい。しかし初々しくて私的にはそんな香里が激萌え。

 それを言ったらまた真っ赤になって可愛いんだよなと思いつつ、恥ずかしいから俺も言えないんだよな。

 

 

ピンポーン

「ん、客か?」

 朝食を終え、リビングでゆっくりとコーヒーを飲んでいたときチャイムが鳴った。

 それを聞いて朝食の洗い物をしてる香里が急いで手を拭いて出ようとする。

「あ、俺が出るから良いよ。香里は洗い物しててくれ」

「ごめんね」

「いい、いい。気にすんな」

 う〜む、これで香里がメイド服じゃなかったら新婚だな。

 …

 ……

 ………

 それも良いかも。

 今度香里に相談してみようかな。

 

 

「はい、どちら様ですか?」

「よう、相沢」

 北川? 何故に水瀬家に?

「いや、暇だったからな」

「ま、それは良いとして。何でこんな時間に?」

 現在朝8時。早いと言うほどの時間ではないが、遊びに行くにして早く2時間ほど早いと思うぞ。

「ふ、朝のラジオ体操に出たまでは良かったんだが、その後やる事も無く「帰って寝ろ」」

バタンッ

 問答無用で扉を閉める。

 バカが、せっかくの朝の一時を下らん理由で邪魔しくさりやがって……

「あら。お客さま、帰ったの?」

 丁度俺が扉を閉めた瞬間、台所から香里が顔を出した。

 相変わらず萌え萌えな立ちポーズ。ご飯4杯はいけるな。

「ああ。下らん訪問販売だったんで追い返――

ピンポーン

ピンポーン

 帰ってなかったようだ。しかし、こいつに今の香里の姿を見せたら暴走する。それはもう間違い無く。

 しからば――

ピポポポポガチャッ

 「じゃかあしい!!」

ズダンッ!

ドゴォッ!

「かはっ!?」

 ――香里を見る前に打ち滅ぼす。

「こ……これは寸打……」

 寸打。作者が密着間合いにおいて切り札にしている打撃法だ。

 わかりやすく技を説明するなら……陸奥圓明流、虎砲と言ったところか。

「……い……いつの……まに?」

 たまらず崩れ落ちる北川。

 作者は空手の試合でこれを使って相手の肋骨を3本へし折ったからな。まあ、無防備に直撃を受けたなら立っては居られまい。

「香里、俺はちょっとゴミ捨てに行って来るが、何か一緒に捨てるもの在るか?」

 俺の突然の行動に呆然としていた香里だが、相手が北川だとわかった瞬間立ち直ったようだ。

「そうね……それじゃ燃えるゴミ、お願いできるかしら?」

「了解。萌えるゴミな」

「燃えるゴミよ」

 うぐぅ、しっかり訂正された。

 

 

ピンポーン

 北川も捨て終え、マッタリと過ごしていたらまた客か……

 ほんと千客万来だな。

「俺が行くから良いぜ」

 編物――今からやってないと間に合わないらしい――をしていた香里に断り席を立つ。にしても、メイド+編物は強烈だぜ。一度は見てみる事をお勧めする。

「あたしが行くから良いのに」

「雇ってメイドをやってもらってる訳じゃないからな。これぐらいやらないと香里に悪いさ」

「そんなに気を使わなくて良いのに。好きで相沢君のメイドやってるんだから」

 ぐはっ!(鼻血) お父さん、お母さん、若気の至り。間違いを犯しちゃいそうです。いや、マヂで。

ピンポーン

 おっと、浸ってる場合じゃなかった。お客さん、お客さん。

 

 

「はい、どちら様でしょうか?」

 また北川なんて事は無いよな。もしそうだとしたら奥義、無空波だ。

「すいません。私、△△商会の○○と言う者です」

 どうやらセールスマンのようだ。

「え〜と、いま家主の人が居ないので」

「いえ、むしろ今回の商品は貴方のような方に向けて作られたものです」

 俺のような人向け? いったい何だ?

「価格もお求め安くなっております。どうぞ商品を手にとって確認ください」

 と言ってアタッシュケースを開く。

 …

 ……

 ………

 中に在った商品はメイド服だった。

 すごく長い沈黙だったような気がした。

「え〜と、メイド服はお気に召しませんか?」

 沈黙に耐えきれなかったのか、セールスマンが口を開く。

「このメイド服は本物の材料を使用しながらも、加工をオートメーション化する事により、普通のメイド服の十分の」

 何やら商品の説明を始める。が、もういいや(自棄)

「香里〜 ちょっと来てくれ〜」

 本当のメイドさんを見せてやろう(壊)

「ちょっと待って〜」

 恐らく編物を置いていたんだろう。返事に少し遅れて香里が顔を出す。

「…………………」

 すごい勢いで商品を片付け始める。う〜む、面白い反応だ。

「失礼しました」

 そのままの勢いで帰っていったし(汗)

 

 

「何のセールスマンだったの?」

 どうやら香里には見えていなかったようだ。

 ま、その方が良いだろうが。

「いや、何でも無い。それよりそろそろ昼飯だな。今日は何だ?」

「何か食べたいものある?」

「いや、何でも良いよ」

「その答えが一番困るのよ?」

「はは、悪い悪い。でもホントの話、香里が作ったものなら何でも良いよ」

「もう、そんな事言って」

 そうは言ってるが香里の顔はまんざらじゃなさそうだ。

 ま、昼飯も楽しい事になりそうだ。

 

 

〜つづく〜


〜後書き〜
雪さん激萌えぇぇぇぇぇぇぇ!!(マテ

それは置いておいて(いいのか!?
……千客万来?
もういいや……潔く腹を斬ろう……

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