ダラララララッ!!
「ちぃっ!」
 バリケードから腕だけを出して敵が居るであろう方向へ向けトリガーを引く。
 俺の持つガスブローバックSMG、MP5KA4クルツが次々と弾を吐き出していく。当然と言うか、威嚇のための射撃のため当たる気配はない。
 詰めて来ているのは舞と名雪……双方共にその機動性に物を言わせ先行したのか、他の人間は今のところ見当たらない。
 舞の装備はベネリM3ショーティカスタム――ストックをスーパー90に交換した物――と左右のホルスターに収まっているイングラムM11が二丁。
 名雪の装備はβ−スペツナズとハンドガン。ハンドガンは……恐らくG23Fだ。何故わかるかって? それは名雪にその銃を進めたのが俺だからだ。
 俺の装備は前述したクルツとG19グロックが一丁ずつ。予備マガジンはクルツが四本、グロックが二本。はっきり言って二人を相手にするのは分が悪すぎる。
 インカム――まあ簡単に言えばトランシーバーの事だ――に、と言うかその先に居る天野に問い掛ける。技術の進歩ってのはいいな。こんなものを簡単にサバゲーに持ち込めるようになるんだから。まあそれはともかくとして――
「天野、そっちはどうだ?」
「もう少しで背後を取れます。時間にしたら80秒と言ったことろでしょうか」  天野と真琴は現在迂回中。北川チームの背後を取るために別行動中だ。
 背後を取る間、俺がここでどれだけ持ちこたえられるかが今回のキーポイントだ。つか、このままの勢いで撃ってたら弾切れになって一人寂しくヒットされそうで怖いのだが。
 おっと、言い忘れた。今回は二チームに分かれてインドア戦――所謂CQB(クローズドクウォーターバトル)をやっている。
 ちなみにチーム分けは――
・相沢チーム
 天野美汐
 俺こと相沢祐一
 殺村凶子こと沢渡真琴
 ――の三人で組んだチームと――
・北川チーム(北川曰くチーム名はツァーレンシュヴェスタンらしい)
 美坂栞
 水瀬名雪
 川澄舞
 美坂香里
 倉田佐祐理
 月宮あゆ
 そしてフィールドの奇行師、北川潤
 ――の七人で組んだチームとなっている。
 北川曰く、この名前の順番にこそ意味があるらしいのだが……そんなことはどうでも良い。
 目下の問題はこのぴんちをどう切り抜けるかだ。まだなのか、マコピー&ミッシ〜。



さばいばるげ〜む

    くろ〜ずどくぉ〜た〜ばとる・前編




 時間は少し遡る。
 俺はどうも寝ている間に廃工場っぽい場所に運び込まれているらしい。
 名前はまだ無い……って「我輩は猫である」じゃなくて、はっきり言って何故こんな場所に運び込まれたのか訳がわからない。
「と言うわけで説明して仕れ、天野」
 何が「と言うわけ」なのか、何が「仕れ」なのか非常に意味不明だが――混乱していたと言うことにしておこう――俺はそばにいた天野に問い掛けた。
「今回は二チームに分かれてインドア戦をする事になりました」
 天野がそう俺に告げる。まあ、サバゲーをやること自体に否はない。寝ている間にこんな所に連れて来るのは常識的にどうだろう、とか考えるけど否はない。
 否はないのだが――
「もしかして、こっちのチームは俺を含め三人?」
 そう、こっちのチームは三人――俺と天野と真琴――なのだ。
「今回の相沢さんの装備はこれらです」
 どうやら俺の問いは丁重に無視されたようだ。まあ、無視されなかったとしても今更チーム分けが変わるわけじゃないだろうけど。
 それはそれとして、今回の装備は……クルツとグロックだけですか?
 え、マジで?
「なあ、天野。俺にはクルツとグロック以外見えないのだが……もしかして目の錯覚かな?」
「いえ、相沢さんの目は正常だと思います。と言うか、私にもその二つの銃以外見えません」
 キッパリとそう言われた俺はどう返せば言いのだろう? 意訳するとしたら、それはこれ以上突っ込んで質問するなと言う意味ですか?
 グロックは長年使ってきた相棒だから文句はないのだが――どちらかと言えば長物の方が文句バリバリだったりするし。
 まあ、どっちにしろチーム分けと一緒で今更なんだよな……今更。と言うわけで建設的な判断として戦況の確認でもするか。
「こっちの武器は、俺のクルツにグロック……」
「私はVZ61 スコーピオンにバックアップ用のCOLT−PYSON 4inchコルトパイソンと隠し球が一つです」
「真琴はステアーAUGミリタリーにS&W M945SVが二丁よ」
 なるほど、天野はいつものコルトパイソンにスコーピオンと隠し球、真琴はAUGにM945か…………ん、隠し球って言わなかったか?
「隠し球?」
「隠し球です」
 そう言って天野は微笑を浮かべた。凄くいい笑みなのだが……この背筋を走る悪寒はいったい何だろう? いや、気にするまい。誰だって命は惜しい。
 それはともかく、弾数が心許無いな。どうせでもこっちは人数が少ないのに……武装は貧弱と言うほどでもないが、かといって強力でもない。普通人数の少ないチームは武装的に強化されるべきだろう。
 出来ればもう一丁電動の長物が欲しいところだ。出来ればP−90やSIG552あたりが。まあ、無い物を強請っても仕方ないが。
「北川チームの武装は?」
「不明です」
 は? 不明って言いました、今?
「えと……不明?」
「不明です。正確に言えば、北川さん曰く――今から戦う者同士、事前に互いの武装を知っているのは変だろう――との事です」
 天野の言葉に、俺は思わず手を頭に当てて唸る。
 相変わらずアイツは……。
 確かに間違っちゃいない。間違っちゃいないけど、それが正解と言うわけでもない。なんつーか、ほんとにアイツらしい言葉だ。
「つーことは、敵はこちらより多数で火力は不明と言うわけだな。ネガティブな条件以外ないのか、ネガティブな条件以外」
「後は……トラップUを一つ用意しています」
 トラップUか……使いどころが難しいな。通路の途中に仕掛けるにしても……
「そう言えば……今回はどう言うルールなんだ?」
「殲滅戦です。恐らく予想していると思いますが、こちらが防衛側と言うことで先にフィールドに入ってます」
「なるほど……ここは既にフィールド内だったわけか」
 どおりで廃工場のような気がするわけだ。
「作戦は立ててあるか?」
「挟撃……挟み撃ちにしようかと。相沢さんには一番面倒な囮役を、と考えていますが」
「OK、それで行こう。トラップを仕掛ける場所は任せる。移動中にここだと言う場所に仕掛けてくれ」
「後はこれを」
 そう言って天野が差し出したのはインカム。サバゲーでこれを使う日が来るとはなぁ……
「開始は十分後です。装備の確認を怠らないよう」
「了解した」



「と言うわけで、今回は相沢チームを狩るのが任務だ」
 そう言って俺は目の前にいる女性達――ツァーレンシュヴェスタン――を見回す。
 おっと、自己紹介が遅れたな。俺の名前は北川潤。フィールドの奇行師と呼ばれる男だ。
「先方はフェンフとゼクスにやってもらう」
「フェンフとゼクスって誰のことよ?」
 ふむ……もっともらしい疑問だな美坂君。いや、ズィーベン。
「一から説明するから良く聞けよ。言ってしまえばそれがコードネームだ。アイン、天野美汐。ツヴァイ、相沢祐一。ドライ、沢渡真琴。フィーア、美坂いもうt――もとい、美坂栞。フェンフ、水瀬名雪。ゼクス、川澄舞。ズィーベン、美坂香里。アハト、倉田佐祐理。ノイン、月宮あゆ。そして私こと北川潤がマスターだ」
「そのコードネームだとこっちの負けは確定したような物ですね」
 なにぃ!? まさか、アハト佐祐理は知っているのか、アレを!?
 まあ、確かに同じジャンル――Nitro+のベクトルをKeyと同じと言っていいのかどうかはアレであるが――に属する作品ではあるが……
 オーケィ、落ち着け。気を取り直してこちらの戦力を分析しよう。
 まずは俺の装備、ルガーP08のSVだ。以上。え、少ないって? いや、今回俺は戦闘に参加する予定ないしな。ツァーレンシュヴェスタンが決めてくれるって。
 続いて、つか名前どおりの順番で紹介する。
 フィーアはMP5A4PDWにM945コンパクト。
 フェンフ名雪はβ−スペツナズにG23F。
 ゼクスはベネリM3ショーティーカスタム(ストックスーパー90バージョン)にイングラムM11が二丁。
 ズィーベン香里はSIG552にワルサーP99。
 アハト佐祐理はP−90にCZ75 1st。
 ノインあゆはG36CにベレッタM84FSチーター。
「戦力差は圧倒的だ。だが、地の利は向こうにある。ペースを握られたら厄介だ。だから相手にペースを握られる前に一気に片をつける。先にも言ったが機動力の高いフェンフ名雪ゼクスに先行してもらう。いいか、今回は勢いが肝心だ。一気に敵を殲滅し尽くせ! 以上。作戦開始は十分後、装備の点検を怠るな」



〜つづく〜

〜後書き〜
 真琴の影薄っ(マテ
 いや、だってああ言う話になると出番が思いつかないし(ぉぃ
 と言うわけで長らくお待たせしました、サバゲーの新作です。
 当初の予定どうりインドア戦、CQBと言うことに相成りました。
 え、まだCQBになってないじゃんて? まったくです(ぉぃ
 まあ、今回は導入部分なので(分けるな
 では次回、くろ〜ずどくぉ〜た〜ばとる・後編でお会いしましょう!!


※SVとはシルバーバージョンや、ステンレスバージョンの略です。ベレッタで言うところのINOXモデル。


※インカムとはinter-communication-systemの略で、有線で各部署への指令や情報伝達のための通信装置のことです。
本来コードレスのものはインカムとは呼ばず、トランシーバと呼びますが、それにこだわらずに情報伝達のための通話機器を総じて呼ぶ場合が多いので、今回はこの呼称で行かせて頂いております。


※実際、仲間内でサバゲーを始める時点で相手の装備を知らない事はほぼありません。
 何故なら、サバゲーをやる人種は自分の装備をどれほど小さい物でも自慢したい人種なのです(もしかしたら作者達だけかもしれません
 まず間違いなく相手の装備、大まかな弾数は把握してます。


戻りましょう!!